天然歯とインプラントの違い
歯のインプラントは、まるで自分の歯のように噛めることから、よく「第二の永久歯」とも呼ばれ、歯を失った方の間で非常に多くの関心を集めている治療法です。この例えのように、新しい歯が蘇るようなイメージを持たれることが多いため、「インプラントを入れたら一生持つ」と思っている人が多いのですが、生体に埋め込む治療法ゆえに、きちんとお手入れをしないとインプラントをダメにしてしまうこともあります。つまり、インプラントを入れようかと考えている人は、天然歯とは異なるインプラントの特徴やインプラントの正しいケア方法をきちんと理解した上で、インプラント治療を受けることが大切です。
インプラントとはどんなもの?
インプラントは「体に埋め込むもの」という意味で、歯科の場合は主にチタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込むものを指し、正確には「デンタルインプラント」と呼ばれています。歯を失ってしまった場合の治療法としては、他の治療法と比べて、見た目の上でも、噛み心地の上でも、最も自然の歯に近い状態に回復できるのが特長です。ちなみに、歯に差し込む「差し歯」とは全く違うものです。
インプラントは現在の時点では保険治療には組み込まれておらず、自費診療となりますが、その審美性や機能性の高さ、快適さからインプラントを選択する方が後を絶ちません。なかには、体に異物を埋め込むということで、抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、インプラントは非常に生体親和性の高い治療法です。そして、開発されてから数十年が経ちますが、その間にも多くの改良が加えられ、その安全性は確立されています。
●インプラントと差し歯との違い
歯がなくなった場合に「差し歯にできますか?」と聞かれることがあります。確かに長いものを差し込むというイメージから、両者が混同されてしまうことはよくあります。しかし、この二つは全く別物で、次のような違いがあります。
差し歯
差し歯というものは、インプラントのように骨に埋めるものではなく、実は歯根が残っている場合に、その歯根に土台を立てる治療法です。
インプラント
インプラントは骨に直接埋め込み、その上に人工歯を被せます。歯根が残っている場合には行うことができません。自費診療のみとなります。
インプラントはなぜ優れている?
歯が抜けた場合に行われるインプラント以外の治療法としては、ブリッジ、入れ歯があります。インプラントはよくこれらの治療法と比較され、優れた治療法であると言われますがその理由はどのようなものでしょうか。
■インプラントが他の治療法よりも優れている理由
1.違和感なく、よく噛める
インプラントは自分の骨に人工歯を直接埋め込んで噛むため、他の治療に比べて、非常によく噛めるのが大きな特長です。とくに入れ歯との違いは歴然で、外れたりずれたりすることもないため、まさに自分の歯と遜色なく噛むことが可能です。
2.見た目がいい
入れ歯の場合、固定させるために自分の歯に金具がかかって表から見えてしまうことがありますし、ブリッジの場合には保険で行う場合、被せ物の部分が金属になって目立ってしまうことがあります。インプラントは骨に直接単独で埋め込みますので、ハタから見ても天然歯と区別がつかないくらいの仕上がりになります。
3.他の歯を削らずに治療できる
インプラントは他の歯を削らず、単独で入れられるのも大きなメリットです。少数本歯が抜けた場合によく行われるブリッジの場合、隣接した歯をたくさん削って被せなければなリません。
4.顎の骨が痩せるのを防いでくれる
顎の骨というのは、刺激を受けなかったり、逆に異常な刺激を受けすぎたりすると骨が吸収してやせてしまいます。その点インプラントは噛む力がインプラントを通して伝わることにより、骨が痩せることを防いでくれます。
インプラントは天然歯とどんな違いがある?
インプラントと天然歯にはどのような違いがあるのか、一つずつ見ていきながら比較してみましょう。
■インプラントは噛み合わせのダメージを受けやすい
天然歯の場合、歯根と骨の間には歯根膜と呼ばれる組織があります。それに対してインプラントの周囲には歯根膜は存在せず、インプラントと骨が直接結合しています。歯根膜は外部からの力に対するクッションの役割をしており、異常な噛み合わせの力や、歯ぎしりによる強い力を弱めてくれる働きがあります。
また、異常な力がかかると痛みを感じて、体に危険信号を出してくれたり、歯周組織がダメージを受けても再生させるような働きもあります。インプラントの場合は歯根膜が存在しないため、これらの恩恵を受けることができません。つまり、インプラントの場合は、インプラントに異常な力が加わると、そのダメージをもろに受けてインプラントの寿命を縮めてしまうことにつながります。
■インプラントは噛み合わせの歯に力がかかりやすい
天然歯の場合は歯根膜というクッションがあるため、実際に噛むと歯は微妙に動きます。しかし、インプラントの場合は骨に強固に埋まっているため、噛み合わせの歯に強い力をかけてしまうことがあります。
■インプラント周囲の歯肉は天然歯よりも炎症が進行しやすい
天然歯の場合、歯肉の線維は歯根表面のセメント質と呼ばれる部分の内部にしっかりと入り込んで強固にくっついています。しかし、インプラントの場合、このセメント質が存在しないため、歯肉線維はインプラント体に対して水平に走っているだけで、付着は弱い状態です。そのため、歯肉がはがれやすく、一度歯肉に炎症が起こると、深部に進行しやすいという弱点があります。
■インプラントは感染に対して弱い
血液供給の量にも違いがあります。天然歯は、歯肉、歯根膜、歯槽骨という3方向からの血液供給がありますが、インプラントには歯根膜が存在しないため、歯肉と歯槽骨の2方からしか血液供給を受けません。血液供給の量が少ないと、感染防御をつかさどる好中球の数が少ないということになりますので、インプラントは感染に対して弱いということが言えます。
インプラントも歯周病菌に感染する〜インプラント周囲炎〜
インプラントは全て人工物ですから、虫歯になることはありません。そのため、インプラントは天然歯よりもお手入れしなくてもいいと思っている人もいます。しかし、インプラントは歯周病にかかることがあります。歯周病というのは歯の周囲の組織が歯周病菌によって破壊されてしまう病気のことですが、これがインプラントで起こる場合、インプラント周囲炎と呼ばれます。インプラントは天然歯と周囲の組織の構造が異なるため、天然歯よりも歯周病菌に影響されやすく、注意が必要です。
自分はインプラントに適している?適していない?
天然歯とインプラントの違いを踏まえた上で、どのような人がインプラントに適している、もしくは適してない、と言えるのでしょうか?順に見てみましょう。
1.セルフケアがきちんとできるか?
インプラントは天然歯よりも感染の予防に対してシビアな姿勢が求められます。
2.ひどい歯周病にかかっていないか?
ひどい歯周病にかかっている歯があり、お口の中に歯周病菌が多いと、インプラントに感染を起こしやすくなります。
3.歯ぎしり、食いしばりはないか?
インプラントは異常な力に弱いため、歯ぎしり・食いしばりのような強い力がかかると非常に予後が悪くなります。
4.糖尿病はないか?
糖尿病があると免疫力が低下するため、感染症にかかりやすくなります。歯周病も例外でなく、非常に歯周病が進行しやすい状況になります。
5.タバコを吸うか?吸わないか?
タバコは歯茎の毛細血管を収縮させたり、傷の治りを悪くさせたりするため、歯周病を悪化させることで知られています。
6.骨粗鬆症でないか?
骨粗鬆症はインプラントを埋め込んでもうまくくっつかなかったり、骨粗鬆症の薬の副作用で、インプラントなどの外科手術を受けると、骨が壊死してしまうことがあるため、あまりインプラント治療には向かないと言えます。
7.定期的にメンテナンスに通えるか?
治療を受けた歯医者さんで、しっかりとその後のメンテナンスを受けることがインプラントをどれだけ長持ちさせられるかのカギになります。
インプラントに関しては私たちにお聞きください。
毎日のお手入れに加え、定期的に歯科医院でもメンテナンスが必要です。あべひろ総合歯科では、インプラント埋入後の患者さんに安心していただけるよう、専任衛生士がつきメンテナンスを行っています。
天然歯に近い噛み心地を実現するインプラントですが安心して治療や説明が受けられる歯科医院を選ぶことは患者さんにとって最も重要です。